学会発表のためのスライド作成
ー空白の存在が伝えたい内容を鮮明にするー
発表のためのスライドを文字や画像で埋め尽くさないことをお勧めします!スライドには空白部分が必要で、空白部分がないと本当に伝えたい内容が文字や画像の中に埋没してしまうからです。
例えば、昔、自分は下記のようなスライドを作成していました。
このスライドは「研究の背景」について説明するためのスライドです。
ご覧のように、上のスライド、一見しただけでは研究の背景が何であるかさっぱりわかりません!でも、当時は、これでもあれこれ工夫して書いたつもりなのです。
例えば
1. 長い文章を書かないで、「・」を使って箇条書きをにした! 2. 研究の対象が間(ま)であることを、吹き出しで強調した! 3. 音声を扱っていることが直感的にわかるように、音声波形の画像を挿入した!
などです。
他にも色々工夫したつもりですが、結局、ひとりよがりな工夫でした。逆に、工夫しようとあれこれ書き足してしまったことで、研究の背景が何であるかボケてしまった印象です。
多分、あれこれ書き足したことにより空白部分がなくなってしまい、本当に伝えたいことがわからなくなってしまったのでしょう。
でも、そこはグッと我慢して必要なことだけ書くようにしましょう!
なぜなら、本当に伝えたいことが伝わらなくなってしまうからです。
では、この「研究の背景」を説明するスライド、今の自分ならどのように作成するでしょうか?
今、自分の「研究の背景」を紹介するスライドを作成するとしたら下記のようなスライドになると思います。
工夫した点は
1. 空白部分を利用して、必要な情報を鮮明化 2. 研究の対象が間(ま)であることを、色の反転のみで表現 3. 研究の背景と関係のない情報は、極力削除
などです。以下に、1~3について説明します。
1. 空白部分を利用して、必要な情報の鮮明化
まず、スライド上の文字数を減らしました。その結果、読んでほしい内容が鮮明になりました。
このくらいの文字数なら、読み手に負担はかからないと思います。
また、文字と文字との関係をテキストの配置でわかるよう工夫しました。
空白部分があるからこそ、テキストの配置が鮮明になったと思います。
2. 研究の対象が間(ま)であることを、色の反転のみで表現
研究発表の場では発表時間が限られているため、自分の研究対象等を簡潔に説明する必要があります。上のスライドでは、色を反転することにより間(ま)に着目していることを強調しました。
空白部分があるからこそ、色の反転だけでも強調が鮮明になります。間(ま)に着目していることが一目瞭然になったと思います。
3. 研究の背景と関係ない情報は、極力削除
発表用のスライドは配布資料ではありません。発表用のスライドは、あくまで口頭で発表する内容を補佐するための資料です。スライド作成中は多くの画像や記号を使いたくなりますが、そこはグッとこらえて必要最低限の情報だけに絞るようにしましょう。
空白部分があるからこそ、上のスライドで表示されている記号や線などの存在が鮮明になります。口頭発表では、スライド上の矢印や線が意味する内容を語っていけばいいはずです。
とにかく、スライドを作成していると、空白部分に何か書き加えていきたくなります。でも、そこはグッと我慢しましょう!
空白部分があってこそ、伝えなければならない文字や線が鮮明になるからです。
そして、鮮明に表示された文字や線が意味している内容を口頭で説明していきましょう。聞き手は多くの情報を「読む」必要がないので、話し手のことばを「聞く」作業に集中できるはずです。
発表用スライドを作成しているときは、スライドにあれこれ書き加えたくなります。でも、書き過ぎると空白部分がなくなり、本当に伝えたいことがわからなくなります。発表用のスライドに書かれている本当に伝えなければならない文字や線を鮮明にするため、スライド上の空白部分を残しておくことをお勧めします!